「引越しでダンボールの中身の荷物が壊れたら、もちろん全部引越し会社が補償してくれるんでしょう?」と思ってませんか?

こんにちは。トラックの荷台でダンボールを無理やり押し込んで、ダンボールを潰してしまった経験がある、元引越し業者スタッフの管理人です。

引越しでは、荷物をダンボールに梱包していても、事故が起こってしまうことはあります。

特にありがちなのが、ダンボールの中身の破損事故です。

ダンボールの中身は、大きく分けて、梱包のミスと運搬時のミスによって破損します。

残念ながら、梱包のミスは、原則としてお客さまの責任とされ、補償対象外となります。このため、荷物の梱包は慎重にするべきです。

ただし、例外として引越し業者が梱包した場合のミスは、補償対象となります。

また、運搬のミスは、よほどのことがない限り、引越し業者の責任とされ、原則として補償対象となります。

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ダンボールの中身の破損は原則としてお客さま負担

お客さまのミスでは引越し業者は「免責」される

お客さまがダンボールで荷物を梱包した場合に、梱包のミスによって中身の荷物が破損したときは、お客さまの「故意又は過失」となります。

この場合、引越し業者は「免責」され、破損した荷物は補償対象外となります(標準引越運送約款第23条第8号)。

第23条(免責)
当店は、次の事由による荷物の滅失、き損又は遅延の損害については、損害賠償の責任を負いません。
(第1号から第7号まで省略)
(8)荷送人又は荷受人等の故意又は過失
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

ですから、お客さまご自身で梱包した場合は、補償されないものと思ってください。

もちろん、運搬の際に、引越し業者のスタッフがダンボールを落としたり、よほど乱暴な扱いした場合は別です(後で詳しく説明します)。

引越し業者の梱包の場合は補償対象

逆に、引越し業者のスタッフが梱包した荷物については、原則として、補償対象となります。

つまり、引越し業者が荷物を梱包するプランである、おまかせプラン・おまかせパックや前日梱包サービスを利用した場合。

この場合は、ダンボールに梱包された荷物の破損は、ほとんど補償対象となります。

参照:とにかく楽に引越ししたい人にオススメ!―おまかせプラン・おまかせパック

参照:無事故で引越ししたいないら前日梱包サービスを利用する

このため、例えば、小型の荷物が全般的に高価な場合、お客さまご自身が梱包するのであれば、よほど厳重に梱包する必要があります。

そんな手間がかかることをするよりも、引越し業者に任せてしまったほうが、補償交渉がスムーズに進むという意味でも、安心です。

引越し業者のスタッフがダンボールを落とした場合は補償対象

焦る引越し業者男性スタッフ

引越し業者は「ミスをしなかったこと」そ証明しないといけない

引越し業者のスタッフがダンボールを落とした場合に、荷物が破損していたときは、当たり前ですが補償対象となります(標準引越運送約款第22条)。

第22条(責任と挙証等)
当店は、自己又は使用人その他運送のために使用した者が、荷物の荷造り、受取、引渡し、保管又は運送に関し注意を怠らなかったことを証明しない限り、荷物その他のものの滅失、き損又は遅延につき損害賠償の責任を負い、速やかに賠償します。
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

この規定にある「荷物の荷造り、受取、引渡し、保管又は運送に関し注意を怠らなかったことを証明」がポイントです。

つまり、引越し業者が「ミスをしなかったこと証明しない限り」、原則として、引越し会社には損害賠償責任が発生します。

逆にいえば、「ミスをしなかったことを照明」した場合は、引越し業者は責任を負いません。

ただ、これは、いわゆる「悪魔の証明」であり、「何かがなかったこと」を証明するのは、はかなり難しいです。

ダンボールを落とすのは明らかに引越し業者のミス

引越し業者のスタッフがダンボールを落とした場合は、当然、「注意」を怠ったことになり、補償対象です。

ダンボールが落ちた場合、たいていの荷物、特に割れ物は、かなりの確率で破損します。

食器やホーロー製の鍋や土鍋はまず間違いなく割れますし、家電製品は故障する可能性があります。

デスクトップのパソコンなどは、精密機器の塊のようなものですから、なんらかの不具合が発生するでしょう。

引越し業者のスタッフがダンボールを落としたらすぐに開ける

開いたダンボール

ダンボールの落下事故があった場合は作業を中断する

実際に、引越し業者のスタッフが、ダンボールを落とした場合や、ダンボールが凹んでいた場合は、いったん引越し作業を止めてください。

そのうえで、すぐに引越し業者のチームリーダー立会いのもとで、ダンボールを開けて中身を確認してください。

また、中身が破損していた場合は、その時その場で、補償交渉を始めてください。

後で確認すると、引越し業者のスタッフからシラを切られてしまい、補償交渉が難航する可能性があります。

潰れたダンボールは種類によって補償対象かどうかが決まる

みかん箱

引越し業者のダンボールは補償対象

ダンボールがトラックの積み込みの際に潰れた場合は、使っていたダンボールによって、対応がことなる可能性があります。

引越し業者のダンボールを使っていた場合、ダンボールそのものには問題はありません。

このため、トラックへの積込みやダンボールの持ち運びに問題があったことになります。

ですから、引越し業者のダンボールが潰れいてた場合は、補償対象となる可能性がかなり高いといえます。

お客さま自前のダンボールはお客さまにも責任がある

逆に、お客さまが自前で用意したダンボールを使っていた場合、強度が弱いときは、お客さまにも責任があることになります。

ただ、引越し業者のドライバーも、強度が弱いことを承知のうえで積み込むわけですから、まったく責任がないとまではいえません。

このように、お客さまと引越し業者との責任の割合がはっきりしないため、補償交渉は難航します。

その意味でも、実は自前のダンボールは、あまりオススメできません。

引越しのために自分で準備したダンボールの使い方と4つの注意点

潰れたダンボールを見かけたら引越し作業を中止する

引越し先(新居・卸地)での荷物の搬入作業の際に、潰れたり凹んだりしたダンボールを見かけた場合は、いったん引越し作業を中止してください。

そして、引越し業者のスタッフがダンボールを落とした場合と同様に、チームリーダー立会いののもとで、ダンボールを開けて中身を確認してください。

もちろん、中身が破損していた場合は、すぐに補償交渉を始めてください。

こちらも、後で確認すると、引越し業者のスタッフからシラを切られてしまい、補償交渉が難航する可能性があります。

引越しのダンボールは早く開梱して事故の連絡・交渉をする

開いたダンボール

ダンボールの中身の破損は意外と時効が短い

実は、ダンボールの荷物の破損の補償については、時効が設定されています。

具体的には、ダンボールの中身の滅失・損壊については、搬入の日から3ヶ月以内が時効位とされています。

つまり、引越しが終わってから3ヶ月以内に引越し業者に通知しないと、ダンボールの中身の事故は、補償されなくなります(標準引越運送約款第25条第1項)。

第25条(責任の特別消滅事由)
1 荷物の一部の滅失又はき損についての当店の責任は、荷物を引き渡した日から3月以内に通知を発しない限り消滅します。
2 前項の規定は、当店がその損害を知って荷物を引き渡した場合には、適用しません。
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

ダンボールはとにかく早く開梱する

ですから、引越しが終わった後は、なるべく早くダンボールを開梱して、中身が破損していないかどうかをチェックしてください。

特に、食器などの割れ物や家電製品などは、壊れやすい傾向がありますので、すぐに使わない場合でも、なるべく確認してください。

また、当面使わない荷物も一度は開けて確認してください(特に、夏の引越しの場合の暖房器具)。

そうしないと、いざ使う時になって開梱してみたところ、中身が滅失・破損していて、しかも時効にかかっていて補償されない、ということになりかねません。

まとめ

いかがでしたか?最後に、もう一度、ダンボールの中身の事故のポイントについて、確認していきましょう。

ダンボールの中身の事故のポイント

  • お客さまが梱包したダンボールの中身の荷物の破損は、原則としてお客さまの責任
  • ただし、引越し業者のスタッフがダンボールを落とした場合は、引越し業者の責任
  • 引越し業者が梱包したダンボールの中身の荷物の破損は、原則として引越し業者の責任
  • 引越し業者が提供するダンボールが潰れていた場合は引越し業者の責任
  • お客さまが自前で用意したダンボールが潰れていた場合は引越し業者・お客さま両方の責任
  • 落下したダンボール・潰れたダンボールがあったら、引越し作業を中止してすぐに中身を確認する
  • その結果、中身の荷物が破損していたら、その時その場ですぐに補償交渉に入る
  • ダンボールの中身の荷物の破損の時効は、引越しが終わった日から3ヶ月間
  • すべてのダンボールは、引越しが終わった日から3ヶ月以内に開梱して中身を確認する

このように、実は、ダンボールの中身の荷物の破損は、そう簡単には補償されません。これは、おそらく、ほとんどのお客さまが、意外に思われるのではないでしょうか。

引越し会社に梱包をお願いしていない限り、ダンボールの中身の荷物の事故は、とても補償がされにくいものです。

実は管理人が、お客さま自信が荷物を梱包する引越しのプラン・パックをオススメしたくないのは、この問題があるからです。

たしかに、お客さまご自身が荷物を梱包した場合、料金・費用は安くなります。それだけ、リスクも高くなってしまいます。

これに対し、おまかせプラン・おまかせパック前日梱包サービスは、事故のほとんどが補償対象となります。

おまかせプラン・おまかせパックや前日梱包サービスは、料金の高さや、手軽さばかりに注目がいきがちです。

ですが、実は、事故があった場合、かなり高い確率で補償してもらえるという、隠れた魅力もあります。

ですから、お金に余裕がある場合は、ぜひおまかせプラン・おまかせパックや前日梱包サービス、それもなるべく大手引越し専門会社のものを利用してみてください。