「引越し業者の営業員って、ダンボールを勝手に置いていくって聞いたけど、あれホント?まあ、受け取っても、返せばいいだけなんでしょ?」と、軽く考えていませんか?

こんにちは。引越しの見積もりのときに、お客さまの意思を無視して、勝手にダンボールを置いていく営業員を蛇蝎のごとく嫌っていた、元引越し業者スタッフの管理人です。

引越し業者の営業員が、勝手にダンボールなどの資材を置くことは、昔からある古典的な手口です。

そして、よくありがちな、引越し業者とのトラブルでもあります。

どうしてこんな乱暴なことをするのかといえば、単純に、その引越し業者のサービスの利用を、既成事実とすることを狙ったものです。

つまり、お客さまが「断れない」ことにつけ込んで、半ば強引にサービスを利用させようとしているわけです。

こういう引越し業者の営業員が相手では、まともな引越しなどできませんので、きっぱりと断りましょう。

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引越し業者からのダンボールの受け取りは「発注」とみなされる?

バツを出す主婦

「ダンボールの受取=お客さまの承諾=契約成立」

訪問見積もりの段階では、引越し業者の営業員から、絶対にダンボールを受け取ってはいけません。

というのも、ダンボールを受け取ってしまうと、その引越し業者のサービスを利用する、という契約が成立する可能性があるからです。

引越しサービスに限ったことではありませんが、契約は、「申込み」と「承諾」によって成立します。

引越しの場合、営業員が訪問見積もりで見積書を渡す行為は、引越し業者からの引越しサービス契約の「申込み」に該当する可能性があります。

仮に、見積書を渡された(=引越し業者からの契約の「申込み」)後に資材を受け取るということは、「その引越し業者を利用する気がある」から受け取ったとみなされるリスクがあります。

つまり、ダンボールの受け取りは、引越し業者の見積もりという契約の「申込み」に対する「承諾」(=引越しサービスの発注)とみなされるリスクがあります。

お客さまからの「申込み」がないと契約は成立しない?

もっとも、これとは真逆の考え方もできます。

専門的な話ですが、引越し業者からの見積書は、契約の「申込み」ではなく、お客さまからの申込みを引き出すための「申込みの誘引」である、と管理人は考えます。

引越し以外の例えだと、スーパーやコンビニの棚に商品が並べられているのと一緒です。このようなスーパーやコンビニの棚に商品が並んでいる状態が、「申込みの誘引」です。

「誘引」ですから、商品を買う(=売買契約を申込む)お客さまを誘っているわけです。

ちなみに、理屈のうえでは、スーパーやコンビニの店員は、お客さまに商品を売る(=売買契約を承諾する)ことを断れます。

これと同じように、引越し業者の見積書は、単なるお客さまへの「申込みの誘引」であって、ダンボールを受け取ったからといって、引越し業者には、契約の「申込み」はしていない、とも考えられます。

「受け取らない」が正解

一般的に、見積書が法的にはどのような性質なのか、実は、ハッキリしていません

一種の注文書のようなものである、という見解もあれば、注文書や注文請書のような受発注に直接関係するような書類ではない、という見解もあります。

こういう場合は、自分にとって、より都合が悪いほうに解釈されるリスクを考えないといけません。

そういう意味でも、引越し業者の訪問見積もりのときは、営業員からダンボールを「受け取らない」のが正解です。

引越し業者の営業員が「サービス」(=タダ)だと言っても受け取らない

拒絶する主婦

無料でも受け取ったら「発注扱い」になるかも

引越し業者の営業員のセールストークとして、「ダンボールはサービス(=無料、つまりタダ)です!!」と言われることがあります。

「まあ、タダだったらいいかなぁ…」と、心理的なハードルも下がり、なんとなく受け取りやすくなってしまいがちです。

非常に古典的なテクニックですが、引越し業者の営業員は、こうした心理的なスキをついてきます。

しかし、無料だからといって、その資材は受け取ってはいけません。

無料だとしても、受け取ってしまった場合は、その引越し業者に引越しを発注したとみなされる可能性があります。

どんな理由でもダンボールを置いていく引越し業者はハッキリと断る

最近では、社員教育が行き届いてる大手引越し専門業者の営業員は、見積もりの段階では、資材を置いていくことはありません。

というのも、このように資材を置いていくような行為は、お客さまのためにならず、トラブルになることがよくわかっているからです。

このため、無理に資材を置いていくような引越し業者は、サービスの質が期待できませんので、ハッキリと断りましょう。

唯一の例外として、引越しのスケジュールが目前に迫っている場合に、いわゆる「即決」をしたときは、ダンボールをその時その場で受け取ってもいいでしょう。

「ダンボールは無料」はウソ

「ウチを利用するなら」という前提条件が隠れている

ちなみに、「ダンボールは無料」という、引越し業者のセールストークは、ウソです。これには、ふたつの意味があります。

ひとつめは、本当は「(もしウチの引越しサービスを利用してくれるなら)ダンボールは無料」だということです。

こうした「前提条件」は、大手引越し業者などはホームページで公表していますが、営業員は、意図的に隠してこともあります。

管理人なら、こういう営業員に「無料なら、このダンボールはメルカリで転売して、他の引越し業者に頼んでもいいですよね?」と聞きたくなります。

こう聞くと、引越し業者の営業員は、あわてて前提条件を言ってくるでしょう。

ダンボールの費用は引越しの料金・費用に含まれる

ふたつめは、ダンボールの費用のことです。

当たり前ですが、引越し業者が提供するダンボールは、引越し業者の敷地に生えていたり、空から降ってきたり、ダンボールのメーカーから盗まれてきたりしたものではありません。

引越し業者が、ダンボールのメーカーにお金を払って作ってもらうものです。

もちろん、ダンボールのメーカーに払われているお金は、お客さまの引越しの料金・費用から出ていくものです。

実は、ダンボールが無料、というのは、単にダンボールの料金・内訳を「無料」ということにしておいて、ごまかしているだけに過ぎません。

このような不誠実な引越し業者には、ちゃんとダンボールの料金・内訳を見積書に明記してもらうようにしましょう。

参照:これだけ見れば大丈夫!引越しを安くする見積書・見積もりの6つのチェックポイント

無理に置いていかれたダンボールは引越し業者に引き取ってもらう

クレームを入れる主婦

「玄関先に置いていく」こともある

引越し業者の営業員の中には、無理にダンボールを置いていく場合があります。

中には、非常に強引にダンボールを置いていくために、お客さまが断れないような場合もあります。

管理人は、玄関先に勝手にダンボールを置いていかれたお客さまのお話を聞いたこともあります。本当にヒドい話です。

このような引越し業者は、お客さまの都合など何も考えていません、利用してはいけません。

引越し業者に引取りを要求するか着払いで送り返す

このように、強引に、あるいは勝手にダンボールを置かれた場合は、営業所や支店に電話して引き取ってもらってください。

それでも応じてくれない場合は、支店や営業所に着払いで送る方法もあります。

ただ、支店や営業所がグルになって、こういう営業スタイルを取っていることもあります。

こういう支店・営業所に着払いでダンボールを送ると、余計に話がこじれることもありえます。

この場合は、本社にクレームを入れたり、本社に着払いでダンボールを送るといいでしょう。

トラブルになったら国土交通省へ

クレームの電話をする主婦

国土交通省は引越し業者を監督する強力な権限がある

悪質な引越し業者の場合とトラブルになった場合は、国土交通省にクレームを入れてください。

国土交通省は、引越し業者(正式には「貨物自動車運送事業者」)を監督・規制する運送業法(正式には「貨物自動車運送事業法」)を所管する官庁です。

つまり、国土交通省は、引越し業者を監督する、強力な権限を持っている官庁です。

悪質な引越し業者に対しては、事業改善の命令を発令する権限もあります。

貨物自動車運送事業法第26条(事業改善の命令)
国土交通大臣は、一般貨物自動車運送事業の適正かつ合理的な運営を確保するため必要があると認めるときは、一般貨物自動車運送事業者に対し、次に掲げる事項を命ずることができる。
(第1号から第5号まで省略)
(6)前各号に掲げるもののほか、荷主の利便を害している事実がある場合その他事業の適正な運営が著しく阻害されていると認められる場合において、事業の運営を改善するために必要な措置を執ること。
出典:貨物自動車運送事業法

消費者庁や国民生活センターに相談しても時間の無駄

よくありがちな誤解ですが、見積もりのときに引越し業者の営業員とトラブルになったからといって、消費者庁や国民生活センターに相談したとしても、時間の無駄です。

消費者庁の所掌事務(≒権限)には、引越し業者の見積もりのトラブルに対応するようなものはありません。

消費者庁は、一応、消費者契約法を所管する官庁ではありますが、消費者契約法は、あくまで民事のルールでしかありません。

ですから、消費者契約法にもとづいて、消費者庁が何かしてくれるわけではありません。

国民生活センターも、単に話を聞いてくれるだけで、悪質な引越し業者に、何かしてくれる、あるいは何かできる権限はありません。

やはり、悪質な引越し業者とトラブルになった場合は、引越し業者を監督する権限がある、国土交通省にクレームを入れるべきです。

【Q&A式】まとめ

いかがでしたか?最後にもう一度、訪問見積もりのときに、なぜ営業員が置いておこうとするダンボールを受け取ってはいけないのかについて、確認しておきましょう。

引越しの訪問見積もりのときに、どうしてダンボールを受け取っちゃダメなの? その引越し業者の利用を「発注」したとみなされる可能性があるからです。
「ダンボールは無料でサービスします!」って営業マンが言ってたし、タダだったら受け取ってもいいよね? ダメです。ダンボールがタダでも、受け取ったら、その引越し業者に「発注」したとみなされる可能性はあります。
引越し業者の営業マンが勝手に玄関先にダンボールを置いていったんだけど、これ、どうしたらいいの? まず、支店・営業所にクレームを入れましょう。そのうえで、着払いでダンボールを送り返しましょう。

支店・営業所がいろいろと言い訳をしたり、ゴネたりする場合や、支店・営業所にクレームを入れづらい場合は、本社の方にクレームを入れて、本社に着払いでダンボールを送りましょう。

引越し業者とトラブルになった場合は、どこに連絡をしたらいいの? 引越し業者を監督している国土交通省です。本省でもいいですし、お住いを管轄する運輸局でもいいです。
よく、引越しのトラブルになったら、消費者庁や国民生活センターに相談するように勧められるんだけど…? 消費者庁や国民生活センターへの相談は、ほとんど意味がありませんので、時間のムダです。

消費者庁や国民生活センターは、国土交通省とちがって、引越し業者を監督する権限や改善命令を出す権限がありません。ですから、相談があれば、話は聞いてくれますが、引越し業者に対しては、何もしてくれません。

管理人がプライベートで引越しの見積もりを取るときは、最初にこう言います。

「即決を要求する営業マンとダンボールを置いていこうとする営業マンには引越しは頼まないし、すぐに帰ってもらう。このあと、『ハイわかりました』と答えない営業マンにも。わかりましたか?」

これほど言っても、「ハイ分かりました」と言わずに、グダグダと言い張る営業員は、「ヤバい」レベルですので、すぐにお引き取り願いましょう。

今どき、ダンボールを置いていこうとする古典的な手口を使うような営業員とは、まともにコミュニケーションが取れるとは思えません。

無料一括見積もりサービスが普及して、相見積もりが当たり前になった引越しの見積もりです。

お客さまの役に立たない営業員は、すぐに他の引越し業者にお客さまを持っていかれるようになりました。便利な世の中になったものです。

ただ、未だにこういう営業員もいることはいます。

ですから、引越しの見積もりをする取るときは、無料一括見積もりサービスを利用して、必ず複数の引越し業者から相見積もりを取りましょう。