管理人が実際に現場で作業をしていたときによく考えたものですが、引越しのサービスは差別化しにくいものです。

この結果、結局は価格競争となることが多いのですが、そうなると、価格差はありまり出せないはずです。

にもかかわらず、実際は、引越し業者によって、料金が大幅に違うことがあります。

では、格安・安い業者は、どのようにして料金を抑えているのでしょうか?

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単に安い引越しは当然デメリットがある

料金・価格を決める要素は、時期、荷物の量=トラックの種類、スタッフの人件費、サービス(特に梱包の質)、距離または作業時間などです。

これらは、スタッフの人件費とサービス以外は、あまり業者間で大幅な差をつけることができません。

このため、引越しの料金・価格には、ある程度「相場」というものがあります。

逆にいうと、スタッフを数を減らして人件費を抑えたり、サービスの質を落として費用を抑えることで、料金を安くすることができます。

ただ、スタッフの数を減らすと、作業自体に非常に時間がかかります。

また、サービスの質を下げると、事故が発生する可能性があります。

このため、ただ単に料金が安い、というわけではなく、それなりのデメリットもあります。

モグリの「引越し業者」のリスク

見積もりの結果、異常に格安・安い料金・価格であった場合は、物流業者が片手間でやっている可能性を疑ってください。

このような物流業者は、引越しのノウハウがなありません。

引越し作業は、トラックがあって人間がいればできる、というほど単純なものではなりません。

このため、片手まで引越しをしている物流業者に依頼すると、いわゆる「安物買いの銭失い」になる可能性があります。

また、同様に、異常に格安・安い料金・価格であった場合は、国土交通省の許可を取得していない、いわゆる「モグリ」の業者である可能性も疑ってください(特にいわゆる「便利屋」に注意してください)。

引越し業者は、一般貨物自動車運送事業の許可を取得しなければなりません(軽トラックの場合は貨物軽自動車運送事業の届出)。

貨物自動車運送事業法第2条(定義)
(第1項省略)
2 この法律において「一般貨物自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。次項及び第七項において同じ。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。
(第3項以下省略)

貨物自動車運送事業法第3条(一般貨物自動車運送事業の許可)
一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。
出典:一般貨物自動車運送事業

一般貨物自動車運送事業(いわゆる「運送業法」)は、引越し業者が最低限守らなければならない法律(いわゆる「業法」)です。

運送業法の許可を受けるには、意外と条件(法的には「要件」といいます)が厳しく、試験と審査を経て、ようやく許可が下りるものです。

また、実際に事業をおこなう際にも、多くの規制があり、その規制の範囲内で引越しの事業をおこなわなければなりません。

まともな引越し業者は、この厳しい規制を守りながら、安くて安全な作業を提供できるように努力を重ねています。

ところが、「モグリ」の引越し業者は、このような厳しい法律を守らずに引越しの事業をおこなっています。

当然、法律を守らずに引越しの事業をやっているわけですから、それだけコストをかける必要はありません。

だからこそ、引越しの料金・値段が安くなるわけです。

このような最低限、守るらなければいけない法律すら守っていないモグリの引越し業者が、果たしてお客さまとの約束を守るでしょうか?

何かトラブルや事故があった場合に、ちゃんと補償してくれるでしょうか?

この点について、管理人は非常に疑問です。

ただ、モグリの引越し業者には、この「運送業法を守っていない」という点が、大きな弱点です。

もしトラブルや事故があった場合、「国土交通省に無許可で運送業をやっている、とクレームを入れますよ」と交渉しましょう。

おそらく、スムーズに交渉がまとまるはずです(ただし、過大な要求をすると脅迫や威力業務妨害に該当する可能性もあります)。

引越し業者が正規の運送業者かモグリの運送業者かは、トラックのナンバープレートを見ればわかります。

いわゆる「緑ナンバー」や「黒ナンバー」の場合は、正規の運送業者ですが、「白ナンバー」や「黄色ナンバー」の場合は、モグリの運送業者です。

ちなみに、よくありがちな間違った解決方法ですが、引越しのトラブルについて、国民生活センターや消費者生活センターに連絡したところで、何の意味もありません。

国民生活センターや消費生活センターは、運送業者に対して、何の権限も持っていません。

大体、国民生活センターは「独立行政法人」であって、国の直接の行政機関ではありません。また、消費生活センターは都道府県の一部の組織ですが、これも国の行政機関ではありません

このような組織にクレームを入れたところで、モグリの引越し業者としては、痛くも痒くもありません。

そうではなくて、運送業者に対して直接的に監督権限を持っている国土交通省にクレームを入れることが、引越し業者にとっては最も脅威となります。

引越し業者の営業員に安い理由を聞く

引越し業者の営業員による見積もりの結果、異常に安いであった場合は、必ず営業員に理由を聞いてください。

すでに述べたとおり、引越しの料金には、ある程度の相場があります。また、引越し業界は、過当競争が続いていて、すでに料金がかなり安くなっています。

このため、そもそも、「異常に安い」ということ自体があまりありません。ですから、「異常に安い」ことには、それなりの理由があるはずです。

なお、引越し業者の営業員が抽象的に説明するようでは、怪しいと思ってください。

例えば、「技術がある」「徹底的なコスト削減をしている」などといった理由がよく使われますが、このような理由は、どの引越し業者でもいえることであり、理由になっていません。

他方、合理的な説明の場合は、問題ありません。

例えば、「スタッフの数が少ない」「簡単な梱包で済ませる」「最低限の養生で作業をする」「たまたまその日は件数が少ない」などが考えられます。

ただし、この際に、料金が安いデメリットを説明してくれるような引越し業者でなければ、注意してください。

結果的に引越し料金・値段が高くつくことも

いくら格安・安い引越し業者であっても、かえって高くつく可能性もあります。

というのも、すでに述べたように、格安・安い引越し業者には、なんらかのデメリットやリスクがあります。

また、人件費(給料・時給)が安いため、優秀なスタッフが集まりにくいこともあります。このため、トラブルや事故が起こりやすい傾向があります。

ところが、このような事情があるにもかかわらず、格安・安い引越し業者は資本が少ない中小企業が多いため、場合によっては、補償交渉に素直に応じてくれないこともあります。

このような引越し業者を相手にして、万が一事故が起こってしまった場合は、結局補償交渉がまとまらず、結果的には、大損となる可能性もあります。