「引越し業者って、金庫も運んでくれるのかしら?ウチ、結構大きくて重い金庫があるんだけど…」と疑問に思っていませんか?

こんにちは。かつて、推定で約100kgの金庫を1人で持って、腰が抜けそうになった、元引越し業者スタッフの管理人です。

金庫には、さまざまなサイズがありますが、一般家庭向けの金庫(せいぜい100kg程度まで)は、たいていの引越し業者は運んでくれます。

ただし、サイズや建物の状況によっては、専門の業者が作業しなければならないこともあります。

引越しの荷物に金庫がある場合、必ず中身の貴重品を取り出して、引越し業者に運んでもらうのではなく、ご自分で運んでください。

金庫の中身の貴重品は、ダンボールに梱包しても基本的には引越し業者には運んでもらえません。

また、仮に金庫の中身の貴重品を運んでくれたとしても、補償の対象外となる可能性が高いです。

中身を取り出したら、あとはそおまましておいてください。当日、引越し業者が運んでくれます。

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重い金庫の引越しは業者に断られることもある

引越し業者は一般家庭用の金庫であれば基本的に運んでくれる

たいていの引越し業者は、一般家庭用の金庫であれば、よほど大きなものでない限り、運ぶことができます。

家庭用の金庫は、30~100㎏程度のものが多いようですが、60Kg程度までであれば、引越し業者でも問題なく運ぶことができます。

ただ、100kgを超えるようだと、状況によっては運ぶことができますが、専門の業者でないと対応できない場合もあります。

また、30~100kgの重さであっても、階段作業など、運ぶ作業そのものが難しい場合でも、取扱いを断られることがあります。

ベテランの引越し業者のスタッフがいないと事故が起こる可能性が高い

金庫は、非常に扱いにくい荷物で、しかも事故が発生しやすい荷物です。金庫の特徴は、単に重いだけでなく、「小さいのに」重い、という点にあります。

実は、この「小さいのに」重いという特徴のため、金庫は非常に運びにくいです。

ですから、力任せに運ぶわけにもいかず、ベテランのスタッフの技術に頼ることになります。

当然ながら、経験の浅いスタッフだけが扱った場合は、事故が発生する可能性が非常に高くなります。

もし事故が発生した場合は、人身事故や建物の損壊など、甚大な被害になることもあります。

現場で引越し業者に断られることもある

このように、取扱いが難しい金庫は、「特殊な管理を要する」もの(標準引越運送約款第4条第2項第3号)扱いとなることがあります。

標準引越運送約款第4条(引受拒絶)
(第1項省略)
2 荷物が次に掲げるものであるときは、当該荷物に限り引越運送の引受けを拒絶することがあります。
(第1号、第2号省略)
(3)動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの
(第4号省略)
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

このため、金庫の容量、サイズ、重さ、引越し現場の状況によっては、引越し業者から、取扱いを断られることがあります。

場合によっては、引越しの現場で、取扱いを断られる可能性もあります(もちろん、有料サービスだった場合は返金してもらえます)。

引越し業者によってはオプション扱いの場合も

引越し業者によっては、金庫の運搬が、オプション扱いで、特別料金や追加料金が発生することもあります。

また、1階に運ぶ場合は通常の料金・費用の範囲内であっても、2階に運ぶ場合は追加料金が発生する、ということもあります。

これは、内階段であっても、外階段であっても、一定以上の重さの金庫を2階に運ぶためには、ベテランのスタッフが2人必要となるからです。

このため、金庫の引越しの料金・費用については、必ず訪問見積もりの際に、引越し業者の営業員に確認しておいてください。

【準備】金庫の引越しでは必ず中身を空にする

引越し業者は貴重品を運んでくれない

引越しの準備のときには、金庫の中身を空にしてください。

「いやいや、金庫の中身空にしたって、たいして重さかわらないでしょう?金の延べ棒ももってないし…」と思うかもしれませんが、そうではないのです。

中身を空にするのは、何もタンスのように、荷物を軽くするためではありません。

実は、引越し業者は、金庫の中に入っているような、貴重品を運んでくれません(標準引越運送約款第4条第2項第1号)。

貴重品とは、具体的には、現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャッシュカード、印鑑などです。

また、美術品・骨董品なども運んでくれません(同第3号)。

標準引越運送約款第4条(引受拒絶)
(第1項省略)
2 荷物が次に掲げるものであるときは、当該荷物に限り引越運送の引受けを拒絶することがあります。
(1)現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャシュカード、印鑑等荷送人において携帯することのできる貴重品
(第2号省略)
(3)動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの
(第4号省略)
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

引越し業者はダンボールに梱包された貴重品も運んでくれない

また、金庫から取り出した中身の貴重品は、たとえダンボールに梱包したとしても、引越し業者は、運んではくれません。

ですから、結局は、貴重品は、お客さまご自身で運ぶしかありません。

というのも、貴重品が入っていると知りながら、引越し業者がそのダンボールを運んで、万が一、盗難や紛失などの事故があった場合は、補償の対象となってしまうからです。

標準引越運送約款第24条(引受制限荷物等に関する特則)
1 第4条第2項各号に掲げる荷物については、当店がその旨を知って引き受けた場合に限り、当店は、当該荷物の滅失、き損又は遅延について、損害賠償の責任を負います。
(第2項省略)
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

引越しのサービスは、とても利益が薄いものです。金庫に入っている高価な貴重品を補償するリスクを取れるほど、利益は出ていません。

ですから、引越し業者は、貴重品や、貴重品が入ったダンボールは運んではくれません。

引越し業者を「騙して」運ばせたら補償の対象外

さて、ここでもう一度、標準引越運送約款第24条を見てみましょう。

標準引越運送約款第24条(引受制限荷物等に関する特則)
1 第4条第2項各号に掲げる荷物については、当店がその旨を知って引き受けた場合に限り、当店は、当該荷物の滅失、き損又は遅延について、損害賠償の責任を負います。
(第2項省略)
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

「第4条第2項各号に掲げる荷物」とは、貴重品・美術品・骨董品などのことです。

つまり、この規定では、引越し業者が「貴重品・美術品・骨董品」と知って引き受けた場合は、補償の対象となる、ということです。

逆にいえば、「引越し業者に貴重品であると知らせずに」、あるいは、(表現は悪いですが)「引越し業者を騙して」貴重品を運ばせたら、事故があっても補償の対象外となる、ということです。

参照:引越しで貴重品を自分で運ばないとどうなる?―紛失しても補償対象外になる

【注意点】金庫の引越しでは床にキズやヘコみができやすい

金庫は重いうえに持ち運びしにくい

金庫の引越しでは、床のキズやヘコみの事故が発生しやすい、という特徴・リスクがあります。

据置き型の金庫は、非常に重く、持ち運びしがにくい形にできています。

これは、主に盗難防止のためです。軽くて持ち運びがしやすいのでは、金庫の意味がありません。

一番小さいサイズの据え置き型の金庫で、なんとか引越し業者のスタッフが1人で運ぶことができるくらいです。

たいていのサイズの金庫は、2人で持たないと、運ぶことができません。

このため、引越し業者のスタッフでも、持て余すことがあるくらいです。

特に金庫を置く瞬間にキズ・ヘコみできやすい

これほど重いものですから、床に置くときは、よほど丁寧に置かないと、あっさり床にキズが・ヘコみができます。

特に、引越し業者のスタッフが力尽き、あるいは手を滑らせて、半ば落下させる形で置いてしまうと、確実に床がヘコみます。

このようなことがないように、ベテランの引越し業者のスタッフは、あらかじめ金庫の設置場所に中古のダンボールを何枚か重ねて置きます。

そして、その中古のダンボールの上に金庫を仮置きし、その後でダンボールを抜き取ります。

ただ、経験が浅い引越し業者のスタッフでは、そのような対処法を知らないこともあり、結果として設置場所がヘコんだり、キズがついたりしてしまいます。

ですから、万が一、床がキズついてしまっても、スムーズに引越し業者と補償交渉ができるように、あらかじめ、「キズがない状態の」金庫の設置場所の写真をとっておいてください。

金庫の下にゴムの部品がない場合は特に注意

最近の金庫の中には、金庫が床に接する部分がゴム製になっているものもあります。

これは、当然、重い金庫が床に接触することで、床にキズやヘコみができないように、配慮されているからです。

ただ、古い金庫の場合は、そのように配慮されていないこともあります。

金属の部分が直接床に接触するタイプの金庫では、ちょっとした衝撃で、すぐにキズやヘコみができてしまいます。

ですから、床との接触部分が金属になっている金庫では、特に床のキズ・ヘコみに注意してください。

確実に床のキズ・ヘコみを予防したい場合は「厚い木の板」(敷板)を用意する

床にキズがつかないようにするためには、金庫の下に敷く木の板(敷板)を用意するのが最も確実です。

万が一、その板の上に乱暴に金庫を置いたり、落としてしまったりしても、よほどのことがない限り、さらに下の床まではキズがつきません。

ですから、できれば、金庫の下に引く厚めの木の板を用意してください。

ちなみに、金属の板ではなく、木の板のほうがいい理由は、金庫が板に食い込んで、安定するからです。

参照:スムーズに業者と補償交渉できる!引越しの床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れへの対策

参照:これで引越し業者との補償交渉もバッチリ!引越しの事故の対処7つポイント

【注意点】金庫は設置場所の床が抜けやすい

金庫用のスペースがある場合はそこに設置する

金庫は、非常に重いため、重さと設置する場所によっては、床が抜けてしまうことがあります。

ですから、金庫の設置場所を決める際には、設置場所の床の強度を必ず確認してください。

最近の建物であれば、よほど重い金庫でない限り、床が抜けることはないと思います。

ただ、中古の住宅の場合は、老朽化によって、床が抜けることがあります。

また、金庫の設置場所として専用に設計されている収納スペースがあるのであれば、なるべくそのスペースに置くようにしてください。

金庫を押入れに入れる場合は特に強度をしっかり確認する

お客さまの中には、盗難防止のために、押入れの中に金庫を設置される方もいらっしゃいます。この場合は、特に床の状況をよく確認してください。

通常、押入れの中は、人が入ることを想定していませんので、床の強度がかなり弱いこともあります。

このため、金庫の重さによっては、押入れの床が抜けることもあります。押入れに金庫を入れる場合は、なるべく押入れ専用の金庫にしてください。

または、引越し先(新居・卸地)が新築一戸建てや新築の分譲マンションの場合は、不動産屋、建物を施工した工務店、建物を設計した建築事務所などに、押入の床の強度を確認してください。

【Q&A式】まとめ

いかがでしたか?最後にもう一度、引越しでの金庫の準備と注意点について確認しておきましょう。

引越し業者は、どんな金庫でも運んでくれるの? 一般家庭用の金庫(重量30~100kg)であれば、よほど重いものでもない限り、運んでくれます。
金庫の引越しの料金・費用は、通常の料金・費用に含まれるの?それとも特別料金や追加料金がかかるの? 金庫の引越しの料金は、引越し業者ごとにちがいますし、引越しの現場の状況にもよります。ですから、訪問見積もりの際に、引越し業者の営業員に詳しく確認してください。
金庫の引越しではどんな準備をするの? 中に入っているものをすべて取出してください。また、貴重品については、お客さまご自身で運んでください。
引越し業者は、金庫を中身入りで運んでくれないの? 運んでくれません。引越し業者は、標準引越運送約款第4条によって、金庫の中の貴重品の取扱いを拒否できます。

なお、ダンボールに入っている貴重品についても、同じように取扱いを拒否できます。

金庫の引越しで注意するべき事故は? 床にキズがついたり、床がヘコんだりします。ですから、なるべく、厚い木の敷板を用意してください。
金庫はどこに設置すればいいの? 場所によっては、床が抜ける可能性がありますので、床の強度をよく確認して、設置場所を決めてください。

特に、押入の中は、床の強度が弱いこともありますので、十分に注意してください。

かつて、日銀がマイナス金利を導入したときに、金庫がバカ売れした、というニュースもありましたが、実は、金庫をお持ちのお客さまは、そんなに多くはないと思います。

管理人も、実際に金庫を運んだ経験は、それほど多くはなく、おそらく、20~30回程度だと思います。

どう考えても、タンスや冷蔵庫を運んだ数のほうが、圧倒的に多いです。

ということは、引越し業者のスタッフですら、「金庫を運ぶ」という経験をしにくくなっている、ということです。

本文でも触れたとおり、金庫は、あまりにも重いために、とても事故が起こりやすい、厄介な荷物です。ちょっとしたミスも許されません。

ですから、経験豊富なベテランのスタッフが運ぶべきなのですが、そもそも、金庫を運ぶ経験そのものができなくなりつつあるわけです。

そこで活躍するのが、大手引越し業者ののスタッフです。大手引越し業者には、多くの金庫をお持ちのご家庭からの引越しの依頼があります。

このため、他の引越し業者に比べて、スタッフが金庫の引越しを経験するチャンスも多いです。

もちろん、経験豊富なスタッフの数そのものも多いため、それだけ安心して金庫の引越しをまかせられます。

ですから、大きな金庫をお持ちのお客さまは、ぜひ、大手引越し業者を利用してみてください。

もちろん、無料一括見積もりサービスを使って、少しでも金庫の引越しの料金・費用を安く抑えてください。